最新記事
キョウチクトウの毒オレアンドリン|街路樹に潜む猛毒
キョウチクトウは、インドから中近東を原産とするキョウチクトウ科の常緑樹で、戦後日本では街路樹や公園樹として広く植えられてきた植物です。夏の街路や公園で群れて咲くプロペラ状の花は目を引きますが、その全身には強心配糖体オレアンドリンが潜み、見慣れた景色と毒性の落差がこの植物の第一の特徴だといえます。
身近な毒草20種|庭と公園にひそむ有毒植物
毒草とは、庭や公園、散歩道の植え込みにまで入り込んでいる身近な有毒植物の総称である。スイセンやトリカブト、キョウチクトウのように見慣れた花ほど強い毒を秘め、白石環のような自然観察の現場では、まず生活圏のどこにそれらが潜んでいるかを確かめるところから話が始まる。
忍者と毒|トリカブトを塗った手裏剣と忍術の薬学
忍者の毒は、黒装束の暗殺者が手裏剣に毒を塗って敵を倒す、という単純な図ではありません。十字手裏剣の実戦使用を裏づける一次記録は乏しく、近代以降の漫画・アニメ・ゲームが形づくった像が多くを占めますが、毒草の知識や武器への毒塗布そのものは、忍術書や伝承に確かに残っています。
マンドラゴラの伝説と毒の正体
マンドラゴラは、地中海東部原産の多年草で、学名は Mandragora officinarum といいます。ナス目ナス科マンドラゴラ属に属し、中世ヨーロッパでは引き抜くと悲鳴をあげ、聞いた者が発狂して死ぬ毒草として語られてきました。
マンダラトキシン|オオスズメバチだけの神経毒
オオスズメバチの毒とは、Vespa mandarinia がもつ毒液であり、1982年に前シナプス作用性神経毒として精製・命名されたマンダラトキシンを含む複合毒です。1回の攻撃で注入しうる毒量は約1.1mgとされ、キイロスズメバチの約0.4mgのおよそ3倍に達しますが、鍵になるのは量だけではありません。
プリニウスの『博物誌』と毒物の記録
『博物誌』は、古代ローマで大プリニウスが完成させた全37巻・2万項目の百科全書であり、天文から動植物、薬草、鉱物までを一書に集めた巨大な知識の保管庫です。1000余部の文献を突き合わせて編まれたため、単なる知識の寄せ集めではなく、観察と整理の執念がそのまま形になった書物だと読めます。
毒殺の世界史|古代から現代まで暗殺に使われた毒
国立科学博物館の特別展毒と法医学史の史料を照合すると、展示と学術文献が一致する点と、伝承が膨らんで実像が掴みにくくなる点が共存することがわかる。本稿は古代(ソクラテスの毒杯)から近代(1836年のマーシュ試験)、現代(リトビネンコ事件とポロニウム210)までを横断的に概説し、
ソクラテスの毒杯|ドクニンジンの作用と処刑の真相
プラトンのソクラテスの弁明クリトンパイドンを注釈付きで通読し、死の場面へつながる接続の運びを研究ノートで追っていくと、あの最期は「自ら死を選んだ哲学者」の美談だけでは収まりません。
ボルジア家とカンタレラ|砒素伝説を検証
ボルジア家とカンタレラをめぐる話は、ルネサンス宮廷の陰謀劇としてあまりに有名ですが、史料を開くと出てくるのは意外なほど大きな空白です。カンタレラは史料上、成分不明の毒としてしか捉えにくく、砒素系、とくに三酸化二砒素(As₂O₃)を思わせる点はあるものの、そこに確証の印を押せる段階ではありません。
アクア・トファーナ|史実と伝説を読み解く
アクア・トファーナは、17世紀イタリアに実在したとみられるヒ素系毒の通称ですが、史実そのものよりも「伝説として知られている顔」のほうが先に広まってしまった題材です。
砒素と「相続人の粉」|法医学が毒を変えた
相続人の粉と呼ばれた砒素は、主として白い粉末の三酸化二砒素(As₂O₃)を指します。無味無臭で、食べ物や飲み物に紛れ込み、しかも長く見抜かれにくかったことが、この不穏な異名を支えました。 私がこの話を書くときは、まず17〜19世紀の裁判版画や新聞挿絵を思い浮かべます。
古代ローマの毒殺|皇帝たちの史実と疑惑
皇帝の食卓に出された一皿のキノコは、本当に帝国の継承を動かしたのか。この記事では、クラウディウスの急死をめぐる毒殺説を軸に、タキトゥスの年代記該当箇所とスエトニウス、カッシウス・ディオの叙述を切り分け、いま比較表に落とし込みながら読んでいる論点を「確定」「有力」「疑惑」に整理していきます。