毒の科学
毒の科学の記事一覧
最新記事
テトロドトキシンとフグの耐性|なぜ自分の毒で死なないのか
フグが自分の毒で死なない理由は、ひとつではありません。テトロドトキシン(TTX、C11H17N3O8、分子量319.27)を主に外部から取り込みながら、同時に自分の電位依存性Na+チャネルのTTX結合性をアミノ酸置換で下げ、神経と筋の麻痺を避けているからです。
毒ヘビの種類と毒の違い|神経毒と出血毒を比較
「コブラ科は神経毒、クサリヘビ科は出血毒」と覚えると入口はつかめますが、毒性学の論文を読み込むほど、その図式だけでは取りこぼすものが増えていきます。3FTx、PLA2、SVMPといった毒素群の一次論文を概観すると、ヘビ毒は単一の化合物ではなく、タンパク質・酵素・ポリペプチドが混ざり合った複合毒であり、
トリカブトとアコニチン|日本三大有毒植物の科学
春の山菜採りの季節になると、毎年のように名前があがるトリカブトは、特定の一種ではなくAconitum属の総称で、日本ではドクゼリドクウツギと並ぶ「三大有毒植物」として記憶されています。
毒の進化|防御と捕食、盗用と共進化の科学
自然史系の特別展「毒」を歩くと、読者の頭にまず浮かぶのは「どれがいちばん危険か」より、「生きものはなぜ、こんな仕組みを持ったのか」という問いだと思います。この記事は、その疑問に答えるために、まずpoisonを食べたり触れたりして効く毒、venomを牙や針で注入する毒、
警告色と擬態|毒を持つ生物の進化戦略
林縁でスズメバチと、それによく似たハナアブを見比べていると、派手な黄黒模様は「きれいな色」ではなく、捕食者に向けた通信なのだと実感します。警告色は、有害性という二次防御を見やすい信号で正直に伝える戦略であり、その効果は捕食者が学び、似たパターンへ一般化できてこそ立ち上がります。
パラケルスス|「用量が毒を決める」の科学史
製薬企業で毒性試験の設計に関わる現場では、同じ物質でも投与量だけでなく投与経路や曝露時期によって作用の様相が変わる事例が繰り返し観察されます。この現場感覚は、16世紀の医師・化学者・錬金術師パラケルスス(1493–1541)が示した「すべてのものは毒である」という格言の系譜とも響きあいます。
毒性学の誕生|古代から21世紀までの科学史
毒性学とは、化学物質や医薬品、環境中の因子が生体にどのような有害反応を起こすのかを研究する学問です。これらの反応がどのような仕組みで現れるのかを、特に用量反応の視点を軸に読み解きます。
神経毒の仕組み|シナプス遮断の分子機構
大学の薬理の実習や授業で何度も見る、あの「正常なシナプス伝達の一枚図」を思い浮かべると、神経毒の整理は一気に進みます。この記事ではその基本図を土台に、どこで信号が止まるのかを軸索伝導、シナプス前、シナプス後の3か所に分け、代表毒素の差分を重ねる形で図示しながら追っていきます。
LD50とは|毒の強さの意味・読み方・限界
LD50は、特定の動物種・投与経路・条件下で50%が死亡すると推定される単回投与用量を示す急性毒性の指標で、ふつうは mg/kg で表します。私が毒性試験のレビューでRat oral LD50 > 2000 mg/kgというSDS表記を見るときも、まずラットの経口データであること、単位、観察期間、
アマトキシン|RNAポリII阻害と肝障害の因果線
アマトキシン中毒の怖さは、食べた直後ではなく、RNAポリメラーゼIIを止めてmRNA合成を断ち、タンパク質を作れなくなった肝細胞があとから崩れるところにあります。熱や乾燥でも失活しにくいこの“時間差の毒”は、タマゴテングタケやドクツルタケだけでなく、
青酸カリはなぜ危険か|KCNとHCNの作用機序
青酸カリはミステリーで「口にした瞬間に即死する毒」として描かれがちですが、科学的に見ると速さの主役はシアン化カリウムそのものではなく、そこから生じる CN− と HCN です。
水銀・鉛・砒素を比較|毒性・症状・規制史
水銀・鉛・砒素は、同じ「重い元素の毒」とひとまとめにすると本質を見失います。毒性を分ける軸は元素名そのものではなく、無機か有機か、金属か化合物か、そして経口・吸入・経皮のどこから入るかです。