アジサイの毒|犬・猫の誤食が危険な理由
アジサイの毒|犬・猫の誤食が危険な理由
アジサイは、日本の梅雨にもっとも身近な有毒植物のひとつである。6月の公園や民家の生垣でよく見かける花ですが、犬や猫にとっては誤食が中毒につながるため、見慣れた景色ほど注意が要ります。
アジサイは、日本の梅雨にもっとも身近な有毒植物のひとつである。
6月の公園や民家の生垣でよく見かける花ですが、犬や猫にとっては誤食が中毒につながるため、見慣れた景色ほど注意が要ります。
梅雨のフィールドで有毒植物のガイドを作るとき、アジサイだけは記述に迷いました。
危険だとは言えても、何が危険なのかを一言で定めにくい植物で、しかも根・蕾・葉に中毒の原因が及ぶため、花だけ避ければよいという回避策は成り立ちません。
犬猫が口にすると嘔吐、下痢、流涎、食欲不振が出て、重い場合は呼吸困難や昏睡に進みます。
症状が出た時点で毒の吸収は始まっているので、様子見は選べませんし、無症状でも受診を考えるべきです。
さらにアジサイは、危険性が知られているのに毒性成分がなお定まらない点でも特異です。
2008年にはつくば市と大阪で人の中毒事例が相次ぎ、30〜40分で嘔吐した例が記録されましたが全員が2〜3日で回復しており、身近さと軽視のしやすさが重なる植物として読んでおきたい存在でしょう。
アジサイの毒はどこにあるのか
アジサイの毒性は、花の中心だけに限られる話ではありません。
根・蕾・葉の3か所が中毒の原因部位として繰り返し挙がり、見た目で安全部位を切り分ける発想そのものが崩れます。
梅雨の市街地で植栽を追ったときも、犬の目線の高さに葉が茂る区画が想像以上に多く、毒性の強さより接触機会の多さがリスクを押し上げると実感しました。
根・蕾・葉に偏る毒性
アジサイで中毒の原因部位として挙げられるのは、根・蕾・葉の3か所です。
花を避ければよいという考えは、犬が口を伸ばせる高さにちょうど葉が来る植え方を前にすると現実味を失います。
庭の中で部位だけを選んで回避するより、株ごと距離を取るほうがずっと合理的です。
散歩道や公園では、落ち葉を匂い嗅ぎの流れで口に入れてしまう場面もあり、見過ごしやすい危険だと言えるでしょう。
品種によって成分含有量が異なり、含まないとされる品種も存在します。
この差があるからこそ、目の前の株を見ただけで危険かどうかを判定する方法はありません。
毒性が事例ごとに揺れる背景には、含有量の不一致が関わっていると考えるのが自然です。
花に見える部分は萼という構造
装飾花の「花びら」に見える部分は、実際には花弁ではなく萼が変化したものです。
中心にある小さな粒こそ本来の花であり、観賞用に目立っている部分と生殖器官がずれているのがアジサイの面白いところです。
以前、装飾花を摘んで断面を観察したとき、この構造が腑に落ちて、「花だけ避ける」という助言がそもそも意味を持たないとわかりました。
つまり、見た目で花を選別しても安全域は広がりません。
花に見える部分を外しても、毒性の論点は葉や蕾、根へすぐ戻ってくるからです。
植物学的な構造を知ることは、回避策の限界を先に理解することにつながります。
犬は掘り返し、猫は毛づくろいで取り込む
犬は土を掘り返す行動があるため、咲いている部分だけでなく根も誤食の対象になります。
土面に近い位置で嗅ぎ、掘り、口に入れる流れがそのまま中毒経路になるので、地植えの株ほど注意が要ります。
犬の事故が起きやすいのは、行動の特性が植物の構造とぶつかるからです。
猫は拾い食いこそ少ないものの、体をよく舐めるため、被毛に付着した破片を毛づくろいで取り込みます。
同じ植物でも、犬は掘削、猫は被毛経由というように危険な経路が違います。
庭にアジサイがある場合は、剪定した葉や茎を放置しないことが予防の基本になります。
日本の梅雨を代表する園芸植物として全国に植栽されている以上、遭遇頻度の高さがそのままリスクになる。
ここがアジサイの厄介さです。
犬・猫がアジサイを食べたときに出る症状
アジサイを口にした犬や猫でまず目立つのは、嘔吐・下痢・流涎・食欲不振といった消化器症状です。
どれも別の不調でも起こるため、症状そのものより、直前に庭や切り花へ触れていたかどうかが判断の軸になります。
見た目が軽くても安心はできず、症状が出た時点で毒の吸収はすでに始まっていると考えるべきです。
最初に出るのは消化器の症状
有毒植物の解説をまとめるたびに痛感するのは、症状リストを並べるだけでは飼い主が動けないことです。
実際に必要なのは「いつまでに動くか」という時間軸であり、アジサイでは30〜40分という目安こそが核心になります。
人の事例でも食後30〜40分で吐き気やめまいが出ており、犬猫で同じ速度と断定はできなくても、数十分単位で進む前提で考えるべきだといえます。
この段階で出やすいのは、嘔吐、下痢、よだれ、食欲不振です。
散歩中に落ち葉を口にした犬を見た飼い主が、吐かないから大丈夫だろうと帰宅してしまう場面に何度か居合わせましたが、症状の不在は安全の証明になりません。
アジサイは梅雨の庭や生け花に紛れ込みやすく、犬は土を掘り返して根に触れ、猫は被毛に付いた破片を毛づくろいで取り込むことがあります。
花びらに見える部分も萼なので、花だけ避ける回避策も成立しないのです。
重くなると神経・呼吸に及ぶ
重篤化すると、呼吸困難や昏睡に進むことがあります。
ふらつき、興奮、過呼吸、痙攣、麻痺といった神経症状の報告もあり、消化器症状で収まるのか、それとも神経・呼吸まで及ぶのかを事前に見分ける手段はありません。
だからこそ、軽い吐き気だけで済むだろうと読むのは危ういのです。
ここで読者に伝えたいのは、症状の重さを摂取量で切り分けられない点です。
少量なら大丈夫という線引きは引けませんし、葉でも蕾でも根でも、どの部位でどこまで起こるかを症状だけから予測することはできません。
アジサイの毒性成分は未特定の部分が残り、見解も割れているため、量の多寡で受診判断を変えない姿勢が必要になります。
症状が出てからでは遅い理由
症状が見えた瞬間には、すでに毒の吸収が始まっています。
つまり「吐いたら様子を見る」「もう少し落ち着いてから動く」という判断は、最も処置が効く時間帯を逃す選択です。
中毒では無症状の時間こそが勝負で、アジサイはその短い猶予が終わるのが早い植物だと考えてください。
人の事例では、つくば市で6月13日に10人中8人が食後30分以内に吐き気とめまいを起こし、6月26日には大阪で40分後に嘔吐と顔面紅潮が出ました。
患者は全員2〜3日で回復しましたが、これは「様子見で耐えられる」という意味ではありません。
むしろ、短時間で症状が立ち上がる急性中毒であることを示しています。
犬猫でも無症状でも受診が勧められるのは、この時間差があまりに短いからです。
誤食に気づいたときの初動
誤食に気づいた瞬間にやることは、口の中と体表から「今まさに入ろうとしている分」を減らし、そのまま受診につなぐことです。
見た目に落ち着いていても安心材料にはならず、無症状のうちに動いたほうが処置の選択肢は広がります。
自分で吐かせる判断はしないでください。
中毒物質のなかには、催吐でかえって損傷を広げるものがあるからです。
口の中と被毛から取り除く
まず口の中に残っている破片を、噛まれない範囲で取り除きます。
飲み込む前に回収できれば、そのぶん摂取量そのものを減らせるため、数十秒の対応でも意味が出ます。
次に口の周りや被毛に付着した部分を水で洗い流します。
とくに猫では、被毛に残ったものを毛づくろいで後から口に入れてしまうため、ここでの洗浄は「今の摂取」を止めるだけでなく、「これからの摂取」も止める処置になります。
自然観察の同行者の犬が公園で落ち葉を口にした際も、まず口を開けて残渣を取り、その場で水を含ませたタオルで口周りを拭ってから病院に向かいました。
あのとき役立ったのは、慌てて触るのではなく、先に減らせる分を減らしたことでした。
吐かせる判断を自分でしない
自己判断で吐かせてはいけません。
中毒物質によっては、催吐が食道や口腔の損傷を広げたり、気道に入る危険を増やしたりするためです。
中毒物質のなかには催吐が禁忌となるものがあり、アジサイの毒性成分が未特定である以上、催吐の安全性も確定していません。
処置の判断は獣医師に委ねるのが筋です。
飼い主が善意で吐かせようとして犬が激しく咳き込んだ場面を見て以来、現場で吐かせないことは徹底して伝えています。
咳き込みは、それだけで余計な負荷になるのです。
受診時に伝えるべき情報
症状の有無にかかわらず受診します。
無症状でも経過観察が必要で、早い段階なら診察で確認できることが多く、処置の選択肢も広がります。
受診時には、食べた部位・おおよその量・時刻をすぐ言えるようにしておきましょう。
現物や写真があれば持参します。
品種差がある植物では、株そのものの情報が判断材料になるからです。
先ほどの犬の例でも、獣医師が最初に確認したのは時刻と量でした。
記録しておいた一行が、その後の判断を早めました。
夜間や休日の発生も想定して、かかりつけ以外に夜間救急の連絡先を控えておくと動きが早くなります。
梅雨どきは夕方以降の散歩と診療時間外が重なりやすく、準備の差がそのまま初動の差になるでしょう。
毒の正体は今も未解明
アジサイの毒は、長く青酸配糖体(アミグダリン)で説明されてきました。
糖と結びついた成分が体内で分解されるとシアン化水素が遊離し、シアン化物イオンが鉄を含むタンパク質に作用して呼吸を阻害する、という筋書きは生化学的には筋が通っています。
ところが実測はその定説にきれいには乗らず、教科書的な説明だけでは片づかない領域が残りました。
フィールドガイドの原稿でこの項を書いたとき、ほかの有毒植物なら成分名と作用機序を一行で済ませられるのに、ここだけは「不明」と書くしかなかった。
その違和感が、この植物の面白さでもあり、難しさでもあります。
教科書的な青酸配糖体説
青酸配糖体説が長く受け入れられたのは、毒の働きが分子レベルで想像しやすかったからです。
アミグダリンのような青酸配糖体は、加水分解でシアン化水素を放出しうるため、摂取後に中毒が起きるという説明が組み立てやすい。
シアン化物イオンが呼吸鎖の要所に食い込むと、細胞は酸素を使えなくなり、見た目以上に深刻な障害へつながります。
毒の見取り図としては整っていたので、定説として流通したのは自然だったのでしょう。
この説明は、他の有毒植物と同じく「成分が分かれば危険性も読める」という期待を満たします。
だからこそ、アジサイのように身近で栽培例も多い植物について、成分名と作用機序を即答できること自体が安心材料のように扱われてきました。
毒と薬の距離は近い、とよく言われますが、ここではその近さがかえって話を単純化してきたとも言えます。
検出されなかった青酸配糖体
ただし、2008年の中毒事例を受けた調査では、原因物質を特定できず、従来説とされた青酸配糖体は検出されませんでした。
実際に中毒が起きた葉から、犯人と見なされていた成分が出てこなかったわけです。
これで「アミグダリンがあるから中毒になる」と言い切る根拠は、かなり揺らぎました。
一次的な調査結果に当たると、教科書の文章が実測に追い越されている場面に立ち会うことになります。
高校の研究でも、葉の青酸配糖体含有と品種差が示唆されています。
含む品種と含まない品種があるなら、事例ごとに検出結果が食い違うことは説明しやすい。
とはいえ、この段階でも「あるはずの毒が見つからない」問題は残り、見解は割れたままです。
検出できなかった事実は、否定の決着ではなく、むしろ問いを深める材料になりました。
浮上したフェブリフジン説
現在、有力な候補として挙がるのがフェブリフジンです。
アマチャと共通して含まれる成分で、甘い葉として知られるアマチャと、毒性が問題になるアジサイが近縁関係にあると知ると、毒と薬の距離の近さが急に手触りを持ちます。
青酸配糖体ではなくフェブリフジンが症状を引き起こしているのではないか、という見方が出てきたのは、その関係性を踏まえると説得力があります。
もっとも、フェブリフジン説も確定には至っていません。
毒性成分が明らかになっていないという立場は公的にも示されており、危険性は事例として確立しているのに原因分子が空白のままです。
そこがこの植物の異例なところでしょう。
正体が不明だから安全、にはなりません。
むしろ、何が効いているかわからない以上、解毒の道筋も量の安全域も引けないのです。
だからこそ、身近な植物であっても回避を強めてしましょう。
人間も中毒した2008年のアジサイ食中毒
アジサイの葉を食べた人間の中毒事例は、2008年に相次いで記録された。
つくば市の飲食店では10人中8人が食後30分以内に吐き気とめまいを訴え、大阪の居酒屋でも玉子焼きの下に敷かれていた葉を口にした男性客が40分後に嘔吐と顔面紅潮を起こしている。
短時間で症状が出ること、しかも別々の店で同じ構図が繰り返されたことが、この植物の危険性を具体的に示した。
つくば市と大阪で相次いだ2件
2008年6月13日、つくば市の飲食店では、創作料理のコースに季節感を出す目的で添えられたアジサイの葉を食べた10人のうち8人が、食後30分以内に吐き気とめまいを訴えた。
2週間もたたない6月26日には、大阪の居酒屋で玉子焼きの下に敷かれていた葉を食べた男性客が、40分後に嘔吐と顔面紅潮を起こしている。
偶然の一件ではなく、提供のしかたが似たまま都市をまたいで起きた点に意味があるでしょう。
| 事例 | 日付 | 場所 | 摂取状況 | 発症までの時間 | 主な症状 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1件目 | 2008年6月13日 | つくば市の飲食店 | 料理に添えられた葉を食べた | 30分以内 | 吐き気、めまい |
| 2件目 | 2008年6月26日 | 大阪の居酒屋 | 玉子焼きの下の葉を食べた | 40分後 | 嘔吐、顔面紅潮 |
この2件は、毒性が机上の知識ではなく、実際の食卓で人を倒す力として働くことを示した例です。
しかも発症が早いので、口に入ったと気づいた時点で動かなければなりません。
人の事例がその時間軸を与えてくれる、数少ないまとまった記録だと言えます。
季節感の演出が招いた事故
提供した店側は毒性を知らず、あくまで季節感の演出として葉を使っていました。
笹や葉物が皿に敷かれる光景は当時の料理店でも珍しくなく、食べられる葉と飾りの葉の境界があいまいだったことが、事故の背景にあります。
アジサイの葉に毒があると想像しにくいからこそ、口に入るまで気づけなかったのです。
ℹ️ Note
料理の見た目を整える装飾は、食べてよいという暗黙の前提を生みます。そこが崩れると、危険は一気に表面化します。
つくば市の店舗は6月22日に営業停止処分を受け、行政は飲食店や販売者に対して、料理への提供や装飾目的での販売を控えるよう注意喚起しました。
事例が2件でも、同じ植物が同じ文脈で使われれば制度的な対応につながる。
現場の慣習をそのまま続けるのではなく、飾りに見えるものほど慎重に扱うべきだと示した出来事です。
全員が数日で回復した意味
いずれの事例でも、患者は2〜3日で回復し、重症例は報告されていません。
ここから読み取れるのは、致死的な毒ではなく、急性の不快な症状を短時間で起こすタイプの毒だという性質です。
強い症状が出ても回復したから安全だった、という話ではありません。
むしろ、短時間で苦しませるだけでも食中毒として十分に危険だとわかります。
この回復の速さは、犬猫の誤食に直面したときにもそのまま考え方の土台になります。
30〜40分で症状が始まるなら、様子見より先に行動するべきだと判断しやすいからです。
2008年当時、料理店で笹や葉物が皿に敷かれるのを見慣れていたため、装飾の葉に毒があるという発想自体がありませんでしたが、この事故以降は飾りの葉を口にしない習慣が定着しました。
講習でこの事例を紹介すると、ほぼ全員が「アジサイが料理に使われていたこと」に驚きます。
毒そのものより、食べ物として出されうる状況があったことのほうが、よほど衝撃として残るのです。
梅雨から初夏に出会う他の有毒植物
スズラン、キョウチクトウ、アジサイは、見た目の印象が穏やかでも危険の質がまったく違います。
梅雨から初夏にかけては庭や公園、切り花の器の中にまで毒性植物が入り込み、遭遇のしかたまで変わってくる時期です。
致死性の高さ、煙への耐性、接触経路、そして身近さを並べて見ると、アジサイの位置づけもよりはっきりします。
スズランは桁が違う
スズランはコンバラトキシンを含み、致死量が体重1kgあたり0.3mgとされ、摂取後1時間以内に発症するとされます。
アジサイで見られるのが数日で回復する事例中心だとすれば、こちらは同じ「危険な植物」という言葉では収まりません。
毒性の強さが一段階どころか数段階上にあり、少量でも急に症状が出るため、軽い気持ちで触れたり飾ったりする感覚が通用しないのです。
さらに厄介なのは、スズランが切り花として室内に持ち込まれる点にあります。
花瓶の水にも成分が溶け出すとされ、口にしなくても接触で影響が出る場合があります。
庭を管理していなくても、テーブルの上や窓辺がリスクの起点になる。
有毒植物のフィールドガイドを作る過程でも、致死量の数字だけを並べても読者の行動は変わらず、実際に事故が起きるのは毒が強い植物より、身近で目線の高さにある植物だと痛感しました。
見落としやすさこそ、スズランの怖さです。
キョウチクトウは煙も危ない
キョウチクトウはオレアンドリンを主毒とし、初夏から夏に花を咲かせる常緑低木です。
街路や公園に植えられているため、庭木としての距離感よりも、日常の動線の中で出会いやすい植物だと言えます。
葉・茎・花・根のいずれも危険で、枝を折った際の汁に触れることも避けるべきとされます。
触れる、切る、運ぶ、そのどれもが接点になるのです。
| 観点 | スズラン | キョウチクトウ |
|---|---|---|
| 主毒 | コンバラトキシン | オレアンドリン |
| 主な危険経路 | 摂取、花瓶の水、接触 | 摂取、樹液接触、煙の吸入 |
| 季節性 | 切り花として室内に入りやすい | 初夏から夏に開花 |
| リスクの特徴 | 少量でも急性症状 | 熱に強く処理後も危険 |
オレアンドリンは熱に強く、燃やした煙を吸っても危険とされます。
公園の植栽調査で、キョウチクトウの剪定枝が可燃ごみとしてまとめられている現場を見たことがありますが、そこで感じたのは毒そのものより、煙の危険が管理者に共有されていない現実でした。
剪定して終わりではなく、燃やした瞬間に別の事故経路が立ち上がる。
そこに、他の有毒植物にはない特殊性があります。
アジサイはどの位置にあるか
アジサイはこの比較の中では、致死性の高さで上位に来る植物ではありません。
ただし、植栽の多さと犬の目線に葉が来る形態を考えると、遭遇確率はきわめて高い部類に入ります。
危険度は毒性の強さだけでは決まらず、どれだけ日常空間に入り込んでいるかで大きく変わるからです。
だからこそ、アジサイは「強毒ではないから安心」でも「軽いから無視してよい」でもなく、接触機会の多さで警戒すべき植物として位置づけるのが適切でしょう。
この視点で見ると、スズランは毒性の桁、キョウチクトウは処理後の煙、アジサイは遭遇頻度という、別々の危険軸を持っています。
危険な植物をひとまとめにせず、毒性×遭遇頻度で評価してみてください。
見た目の印象ではなく、どうやって出会い、どの経路で毒が入るかを押さえるほうが実用的です。
ここを踏まえて観察すると、春から初夏の植栽はずっと立体的に見えてきます。
おすすめです。
誤食を防ぐ暮らしの設計
アジサイの誤食対策は、株そのものを警戒するより、落ちた葉や剪定くずを地面に残さない設計へ寄せるほうが実用的です。
犬猫が口にしやすいのは、匂い嗅ぎの流れでつい葉を拾ってしまう場面であり、飼い主の視線も株元より足元から外れやすいからです。
庭の管理や散歩の工夫まで含めて、誤食の入口を細かく潰していく考え方が役立ちます。
落ち葉と剪定枝を残さない
誤食で最も多いのは、落ち葉を匂い嗅ぎのついでに口にするパターンです。
株の周りに生えている段階より、地面に落ちた葉のほうが小さく見え、警戒の対象から外れやすい。
だから予防の主戦場は株ではなく地面である、と考えると対策がぶれません。
手入れをしている家庭ほど、剪定した葉や茎が一時的に放置される時間が生まれるので、作業前に犬猫を屋内へ入れ、切ったそばから袋に集める順番にしておくと、その短い危険時間を消せます。
自宅の庭でアジサイを剪定した際、切った枝を一輪車に載せるまでの数分間に犬が枝先へ近づいてきたことがあります。
あの一件で、剪定してから片付けるのではなく、先に犬を室内へ入れてから作業を始める流れに変えました。
短い差ですが、この順番の違いが誤食の入口を塞ぎます。
散歩中も同じで、拾い食いをさせないしつけができていれば、落ち葉に鼻先を寄せても口に入れる前に止められるでしょう。
庭の株は距離かフェンスで隔てる
庭やプランターで育てているなら、可能なかぎり犬が届かない場所へ移すのが基本です。
移動できない大きさなら、フェンスなどで近づけないようにします。
大切なのは、距離か障壁のどちらかを必ず用意することです。
アジサイそのものを見張り続けるより、物理的に触れない配置に変えたほうが、毎日の負担はずっと軽くなります。
梅雨の時期だけコースを見直し、植栽が続く区間だけリードを短く持つ運用も有効です。
梅雨の散歩コースを一度歩いて確認し、アジサイの植栽が続く200mほどの区間だけリードを短く持つと決めたところ、それ以外の区間では緊張せずに歩けるようになりました。
過度に神経質になる必要はありません。
全行程を警戒で固めるより、危険がある場所だけを具体的に絞るほうが、飼い主も犬も落ち着きます。
おすすめですし、続けやすい。
日頃から「飼い主が許可したもの以外は口にしない」という習慣を作っておけば、アジサイに限らず植物全般の誤食予防につながります。
切り花と花瓶の水を室内に置かない
切り花として室内に飾る選択は、犬猫がいる空間では見送るほうがよいです。
花瓶の水に成分が出る植物があるうえ、落ちた花や葉が床に残れば、室内は屋外より管理が難しくなります。
机の上に置いたつもりでも、気づけば床に花弁が散っている。
そうした小さな落下物が、思いがけない誤食源になります。
飾るなら安全確認より先に、そもそも置かない判断をするほうが確実です。
室内に持ち込まないと決めるだけで、片付けの手間も見通しも変わります。
花瓶の位置を気にしながら犬猫の動線を避ける必要がなくなり、床に落ちた葉を探す時間もなくなるからです。
屋外で楽しめる植物を屋内へ移すと、見た目は整っても管理の難度が上がる。
そこを割り切って、家の中は空けておく。
これがいちばん扱いやすい。
散歩、庭、室内の三つを分けて考えると、どこで何を止めればよいかがはっきりします。
フィールドワーク重視の生物学者。有毒生物の進化戦略や警告色の研究に取り組み、「なぜ生物は毒を持つようになったのか」という進化的な問いを追究しています。
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「世界最強の毒」は、ひとつの名前を挙げれば済む話ではありません。急性毒性の指標であるLD50は通常 mg/kg で表し、値が小さいほど強い毒を示しますが、動物種や投与経路が混ざった数値を横並びにすると、見かけの順位だけがひとり歩きします。