毒と医学
毒と医学の記事一覧
最新記事
通仙散|華岡青洲が毒で成した世界初の全身麻酔
通仙散は、江戸時代の紀州の医師・華岡青洲が、猛毒植物チョウセンアサガオを主薬に調合した内服の全身麻酔薬である。1804年、45歳の青洲が60歳女性の乳がん手術を全身麻酔下で成功させた事実は、西洋のモートンによるエーテル麻酔公開実験より約42年早い。
クラーレの歴史|矢毒が近代麻酔を生むまで
クラーレは、南米熱帯低地の先住民がアマゾン川やオリノコ川流域で矢に塗ってきた黒褐色の矢毒調製物であり、竹筒・素焼き壺・ヒョウタンに収められるほど姿も組成も一様ではありません。
ボツリヌス毒素からボトックスへ|最強の毒が美容医療を変えた
ボツリヌス毒素は「最強の毒」とだけ語ると、本質を見失います。毒性学の実務でまず見るのは、何mgかではなく、どこに、どれだけ、どの経路で入るかという三つで、全身に回る中毒と、医師が局所へごく微量を打つ医療は、同じ物質でも意味がまるで変わります。 ボツリヌス毒素は毒と薬という二面性を持つ分子です。
トリカブトと漢方の附子|毒が薬になるまで
山菜と見分けを誤れば命に関わるトリカブトは、塊根を加工し、規格の中で管理すると、生薬附子(ブシ)として医療の現場に入ってきます。この記事は、毒草としての植物が、どうやって処方に組み込まれる医薬の素材へ変わるのかを知りたい人に向けて、その道筋を一本の線でたどるものです。
ジギタリスの物語|毒から薬、そして再評価
花壇では優美に見えるジギタリスは、ひとたび体内に入れば心臓に触れる毒でもあります。その危うい植物が、18世紀の観察医学から現代の薬理学へどう橋を架け、心不全治療の景色をどう変えたのかを追うのが本稿です。
抗毒素と血清療法|北里柴三郎が開いた道
北里柴三郎を語るとき、主役は人物名だけでは足りません。焦点に置くべきなのは毒素そのものと、それを狙い撃ちで中和する抗毒素、そしてその抗体を投与して即効性を引き出す血清療法という発想です。
コノトキシンの鎮痛機序|MVIIAとジコノチド
海の捕食者であるイモガイは、数百種規模に広がる系統のなかで、多様な小型ペプチド毒コノトキシンを磨き上げてきました。その到達点のひとつが、ω-コノトキシンMVIIAの作用をもとに生まれ、2005年にFDA承認へ至ったジコノチドです。