最新記事

毒の科学

アマトキシン|RNAポリII阻害と肝障害の因果線

アマトキシン中毒の怖さは、食べた直後ではなく、RNAポリメラーゼIIを止めてmRNA合成を断ち、タンパク質を作れなくなった肝細胞があとから崩れるところにあります。熱や乾燥でも失活しにくいこの“時間差の毒”は、タマゴテングタケやドクツルタケだけでなく、

毒の科学

青酸カリはなぜ危険か|KCNとHCNの作用機序

青酸カリはミステリーで「口にした瞬間に即死する毒」として描かれがちですが、科学的に見ると速さの主役はシアン化カリウムそのものではなく、そこから生じる CN− と HCN です。

毒の科学

水銀・鉛・砒素を比較|毒性・症状・規制史

水銀・鉛・砒素は、同じ「重い元素の毒」とひとまとめにすると本質を見失います。毒性を分ける軸は元素名そのものではなく、無機か有機か、金属か化合物か、そして経口・吸入・経皮のどこから入るかです。

毒と文化

マッドハッターの由来|帽子屋と水銀中毒

マッドハッターは水銀中毒の象徴として語られがちですが、話はそれほど単純ではありません。19世紀の帽子製造で硝酸第二水銀が使われ、振戦や情緒変化を伴うエレチスムが職業病として現れたのは事実で、1829、1860、1861、1865、1941という年表をつなぐと、

毒の科学

ポロニウム210は毒か|暗殺事件で見えた内部被ばく

大学の放射線生物学の講義で最初に印象に残るのは、「紙一枚で止まるα線、しかし体内では細胞核に直撃する」という対比です。放射性物質は毒と呼べるのか――この問いは、毒性学の演習で扱う mg/kg の LD50 と、放射線で使う Bq・Sv の線量がまったく別のものだと気づいたところから、

毒と文化

フィクションと毒|文学・映画・ゲームの表現と現実

毒は刃物のように形を持たず、しかも物語の中心で強烈な存在感を放つ、めずらしい「見えない攻撃」です。青酸化合物を扱う小説、映画、ゲームを続けて追ってみると、症状が出るまでの時間が、文学では数分の沈黙や伏線に、映画では数秒の演技と編集に、ゲームでは1ターンごとの継続ダメージに変換されていくのがよく見えます。

毒と文化

シェイクスピアの毒|ハムレットとロミオの科学

ハムレットとロミオとジュリエットに出てくる毒や薬は、筋書きを動かす小道具であるだけでなく、シェイクスピアの時代感覚を映しています。 本稿では、1594年頃のロミオとジュリエットと、1599〜1601年頃に成立し1602年頃に初演された全5幕・約4000行のハムレットを対象に、

毒と文化

コナン・ドイルと毒薬|ホームズの毒物学

シャーロック・ホームズに現れる毒は単なる怪奇趣味の小道具ではありません。 アーサー・コナン・ドイル(1859–1930)は、エディンバラ大学医学部(1876–1881)で得た医師としての視座と、ヴィクトリア朝末の法科学や帝国の交易路を通じて流入した異国の知識を下地に、毒を描き出しました。

毒と文化

APTX4869の科学|無痕跡毒・幼児化・記憶

ロンドン編と、灰原哀の試作解毒薬が効く修学旅行編を並べて見直すと、この薬の「戻り方」は場面ごとの演出ではなく、可逆性そのものが物語の骨格に組み込まれているとわかります。

毒と文化

FGOと原神の毒表現比較|状態異常と元素反応

同じ「毒」を扱っていても、Fate/Grand Orderは明示的な状態異常として数値化し、原神は元素反応やスメールの死域現象のような環境危険へ分散させています。まず押さえておきたいのは、原神にFGOのような中心的な「毒状態」がある、という理解では読みにくくなる点です。

自然界の毒

ベラドンナの毒性と歴史|美しい女性の三つの顔

博物館の薬草標本室や薬用植物園でベラドンナを見ると、黒紫色のつやのある果実と、うつむく鐘形の花の静かな美しさに、まず目を奪われます。その「目を引く植物」が、実際には瞳孔を開かせる作用をもち、「美しい女性」という名で語られ、魔女伝承にも結びつき、近代医薬ではアトロピンの源にもなったところに、

毒の歴史

ミトリダテス6世|毒免疫伝説の史実と遺産

AppianCassius DioPlinyの原典(AppianMithridatic Wars、Cassius DioRoman History、PlinyNatural History)を当たり、